新潟の「水・土・里(みどり)」を訪ねて 第1回 後編

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第1回 農業用ダムの役割と柏崎土地改良区

Contents

1. 前編:農業用ダムの役割
・農業用ダムとは
・後谷ダム、栃ヶ原ダム、市野新田ダムの概要
・農業用ダムと渇水対応について
・ 農業用ダムを活用した洪水調整について

 

2. 後編:理事長にお聞きしました 「柏崎土地改良区」編
・土地改良区の概要
・土地改良区の取組みについて
・これが「イチオシ!」

後編:理事長にお聞きしました - 「柏崎土地改良区」編

「新潟の水土里(みどり)を訪ねて」第1回 後編は、前編でご紹介した後谷ダム、栃ケ原ダム、市野新田ダムを一元的に管理している柏崎土地改良区について、理事長の五位野 操さんと職員の方たちにいろいろとお聞きしました。

(令和7年10月6日取材)

〇聞き手

はじめに、柏崎土地改良区の概要について、教えていただけますでしょうか。

〇理事長

平成21年4月に、柏崎土地改良区、西山町土地改良区、刈羽村土地改良区の3土地改良区が、3つのダムなどの一元的な管理や農業用水の公平配分を行うために合併し、現在の「柏崎土地改良区」が設立されました。

令和7年度現在、組合員数4,215人、地区面積3,481ヘクタール、職員数11人で、事務所は柏崎市三和町にあります。

当土地改良区内の各河川には3つのダムのほか、36の頭首工(堰)が設けられ、揚水機場・幹線用水路・幹線導水路を経て、農地へ用水が供給されます。また、用水源の少ない地域ですので、用水を確保するため、ため池や反復用の揚水機場が多数設置されています。

〇聞き手

この地域の今までの土地改良の歴史について、教えていただけますか。

〇理事長

土地改良の歴史については、令和2年3月に完了した「国営柏崎周辺農業水利事業」の事業の足跡として北陸農政局柏崎周辺農業水利事業所が編纂した柏崎周辺地区事業誌「水を育み豊かな恵みへ」に記載されていますので、ぜひ読んでみてください。(1冊お貸しいただきました。)

以下、『柏崎周辺農業水利事業 事業誌』(北陸農政局柏崎周辺農業水利事業所)よりポイントを抜粋し、引用させていただきました。

【土地改良の歴史】

1 江戸時代の主な水争い

本地域は流域が小さく、利用可能な用水量が限られるため、水争いが頻発するようになっていた。江戸時代の主な水争いは、以下のとおり。

(1) 元文5年(1740) 藤井堰西江上下流の訴訟

(2) 天明3年(1783) 藤井堰東江・西江の訴訟

(3) 明和3年(1766) 藤井堰西江の3ヶ村の新規加入訴訟

(4) 明和8年(1771) 藤井堰と上流の善根堰の訴訟

(5) 安永2年(1773) 藤井堰と上流の安田堰の訴訟

(6) 天明5年(1785) 藤井堰西江の3ヶ村の新規加入訴訟

 

2 大正7年(1918)、新潟県による大規模河川改修

(1) 藤井堰上流の山室橋から南条の信越線鉄橋までの約9kmの鯖石川の河川改修

(2) 安田堰(現在の善根堰)、藤井堰の改修

 

3 藤井堰・善根堰改修と用水配分の合意

(1) 昭和34年(1959)の豪雨により善根堰が決壊し、災害復旧工事を実施したが、藤井堰組との協議なしに全量取水方式に改築され、用水配分を巡り争い激化

(2) 昭和51年(1976)、鯖石川土地改良区と刈羽平野土地改良区で、当時の受益面積から善根堰1.0に対し、藤井堰2.8の割合とすることで協議が成立し、この協議に基づく設計により善根堰の分水工と藤井堰が完成

 

4 藤井堰

(1) 文禄4年(1595)、直江兼続が「藤井堰協定書」により新田開発を進め、藤井堰を築造

(2) 正保元年(1644)、刈羽郡奉行青山瀬兵衛による藤井堰改修

(3) 大正7年(1918)、藤井堰をコンクリート堰に改修

(4) 昭和52年(1977)現在の姿に改修

 

5 善根堰

(1) 明治41年(1908)に安田堰組合と藤井堰普通水利組合と安田堰の位置変更が協定

(2) 大正11年(1922)、コンクリート堰に改造

(3) 昭和36年(1961)、災害復旧事業で自動転倒ゲートに改築

 

6 かんがい排水事業の実施

(1) 刈羽平野用排水改良事業

昭和27年検討 ダムを計画したが用水配分への疑義と費用負担の問題で断念

(2) 用水改良事業

昭和51年(1976)に県営かんがい排水事業で鯖石川地区(善根堰+用水路)、藤井堰の改修計画

藤井堰は昭和52年(1977)に、鯖石川地区は昭和57年(1982)に事業が完成

 

7 土地改良区の合併

平成6年(1994)鯖石川土地改良区と刈羽平野土地改良区が柏崎市内の他の土地改良区と合併し、柏崎土地改良区となる。

平成21年(2009)4月、柏崎土地改良区、西山町土地改良区、刈羽村土地改良区の3土地改良区が合併し、新しい「柏崎土地改良区」が設立された。

〇聞き手

これからの柏崎の農業を考えるうえで、取り組むべき課題等があれば教えてください。

〇理事長

1つには、今年のような「高温少雨」時の渇水対策です。

管内の3つのダムの恩恵が受けられる地域では、ある程度渇水の影響は抑えられたと思いますが、この3つのダムの配水系統以外の地域では、やはり稲そのものが実らない、稲を刈っても例年に比べて大幅な減収となるなど、渇水の影響がありました。
今後は配水系統以外の地域もダムの恩恵が受けられるよう、かんがい排水事業等を活用した用水路の整備等を検討していく必要があると思います。

 

もう1つは、非常に大きな課題で「高齢化と人口減少による労働力や後継者不足の深刻化」です。
令和5年(2020年)の農業センサスによると、柏崎市の総農家戸数は、平成7年の5,627戸から25年間で70.7%減少し、令和2年には1,649戸になっています。
営農状況では、農業就農者数1,367人のうち65歳以上の高齢者は1,105人と全体の80.8%を占め、平均年齢は64.7歳で新潟県の68.9歳より低いですが、早急に対策を講ずる必要があります。
新規就農者は、令和2年度に県内で279人ありましたが増加は難しい状況で、平均年齢が65歳を超えた現在、どのように対応すべきか、ほ場整備の計画、担い手の確保、一つの作物で、食料だけでなく飼料、繊維、医薬品、バイオ燃料などに使える多目的作物(園芸作物含む)の栽培など、多方面から考えていきたいと思います。

〇聞き手

3つのダムが果たす役割や土地改良区としての様々な取り組みなど、いろいろとお話いただきとても参考になりました。ありがとうございました。

これが「イチオシ!」

柏崎土地改良区内の農家さんの作る「イチオシ!」の農産物をご紹介していただきます。

【令和7年度産 柏崎産コシヒカリ 新米】
柏崎市内にあるJAえちご中越の倉庫にお伺いして、令和7年度産の柏崎産コシヒカリを拝見したあと、近くに柏崎産コシヒカリを使ったおにぎり屋さんがあると聞き、みんなで行ってみることに。

おにぎり屋さんのショーケースには、いろいろな地元産の具材の入ったおいしそうな新米のおにぎりが並んでいます。

午後からの日程の関係で、その場でゆっくりいただくことをあきらめて、途中のパーキングで休憩を兼ねていただくことにして、3個入りの「おにぎりセット」を3つゲットし、一路新潟へ。

途中のパーキングエリアでお茶を買い、遅めのお昼休憩、青空の下、みんなでおいしくいただきました
やっぱり、おいしい! ほおばると笑顔になるお米、おにぎりが大好きです。

管内では、稲作法人やほ場整備地区等へ園芸導入を推進しており、生産効率の高い園芸産地育成を進めています。
お米以外にも枝豆、オータムポエム、たまねぎ、カリフラワー、ブロッコリー、越後姫などの各種園芸作物に取り組み、特に「たまねぎ」「えだまめ」の産地育成・拡大を推進しています。
カレーライスには、かかせない野菜のチャンピオン「たまねぎ」!
管内では田んぼでの栽培を中心にされており、今年は約7haで収穫を行いました。

そして、人気急上昇中の「えだまめ」!
いろいろな品種を組み合わせ7月上旬から9月上旬頃まで楽しめます。
JAえちご中越では、7月中旬から収穫できる柏崎・刈羽地域の早生茶豆を「越後はちこく茶豆」として令和3年にブランド化しました。
茶豆特有の香り・旨み・甘みが特徴で、大粒で食べ応えのある品種です

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